妖怪が刻まれた事典 妖怪が集う遊宴  はてなの虹
乗り越し (のりこし)

 岩手県に伝わる妖怪。

 

一七〇 ノリコシという化け物は影法師のようなものだそうな。最初は見る人の目の前に小さな坊主頭になって現われるが、はっきりしないのでよく見ると、そのたびにめきめきとたけがのびて、ついに見上げるまでに大きくなるのだそうである。だからノリコシが現われた時には、最初に頭の方から見始めて、だんだんに下へ見下ろしてゆけば消えてしまうものだといわれている。土淵村の権蔵という鍛冶屋が師匠の所へ徒弟に行っていた頃、ある夜遅くよそから帰って来ると、家の中では師匠の女房が橙を明るくともして縫物をしている様子であった。それを障子の外で一人の男が隙見をしている。誰であろうかと近寄っていくと、その男はだんだんと後ずさりをして、雨打ち石のあたりまで退いた。そうして急に丈がするすると高くなり、とうとう屋根を乗り越して、蔭の方へ消え去ったという。

『遠野物語 増補版』「遠野物語拾遺」 柳田國男 1935

 

ノリコシ 影法師のようなもので、最初は目の前に小さな坊主頭で現われるが、はっきりせぬのでよく見ようとすると、そのたびにめきめきと大きくなり、屋根を乗越して行ったという話もある。下へ下へと見おろして行けばよいという(遠野物語再版)。

「妖怪名彙」 柳田國男 1938・1939

参考文献

本妖怪事典』 村上健司 毎日新聞社 2000

 

引用文献の底本

本妖怪談義 (現代選書)』 柳田國男 修道社 1956
本妖怪談義 (講談社学術文庫)』 柳田國男 講談社 1977
本新版 遠野物語 付・遠野物語拾遺 (角川ソフィア文庫)』 柳田国男 角川学芸出版 2004

 


妖怪が刻まれた事典


妖怪が集う遊宴

 

PR